恐妻家

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「なあ、こうも思えないか?1分や2分なんて、誤差の範囲内だ。」 「ど、どういう意味ですか?部長。」 「つまりだな、あのシャツが汚れていた所為で、俺はもしかしたら、 あの事故に巻き込まれていた可能性もあるわけだ。」 「ま、まさか。考えすぎですよ。」 「本当にそうだろうか。あの舌打ちが妻の答えではないだろうか。」 「だから、それは空耳・・・」 「見たんだ。」 「な、何をです?」 「妻の家計簿。保険代って表記されていた。」 「保険くらい誰だって入ってるでしょう?」 「受取人は、俺の息子になっていた。」 「俺、実は、リストラ対象に入ってるんだ。」 「えっ?嘘でしょう?」 「妻は、常に完璧を求めていた。ところが、人というものは、思い通りには行かないものだな。」 「ま、まさか。」 「無論妻は、息子にも完璧を求めた。求め過ぎて、息子は家に引きこもってしまった。 あげくの果てには、完全に管理して、尽くした夫はリストラ対象になった。 そんな男にもう用は無いよな。はは。リストラの話をしてからの妻の態度はガラリと変わったよ。 口を開けば離婚の話と、財産分与の話ばかりするようになった。そんなおり、彼女自身が 脳内出血で亡くなってしまった。きっと彼女は息子のことが気がかりなんだろうなあ。」 「・・・」     
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