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ギイィ…と扉が開いた。この家には私しかいないはずなのに。はてな…?と耳を澄ますと、ひた…ひた…と足音がする。嫌だあぁと思って私は震えだした。ぴちょん、ぴちょん、軒先から雨の滴る音がする。ぴちょん、ぴっちょん、どんどん音は早くなる。これは普通じゃないぞお、普通じゃない、ブルブルブルブル震えていると私の首筋に、ぺろん、となにかが当たった。ぎいゃあああ! 叫び声をあげ振り返った私の顔の、前!天井からブラーンとぶら下がったそれ!その顔、稲川淳二、その、ひと!見いたあなあってニタアと笑ったもんだから、そのまま私は意識を失ってしまった。 目を覚ますと淳二はいなくなっていて、代わりに車のキーが床に落ちている。見慣れた、自分の、車のカギだ。 す、と手を伸ばして、それを握る。ちゃりん、金属のぶつかる音がした。と同時に、ちりん…、と鈴の音が聞こえてきた。おや、鈴なんてつけていたっけかな? わたしは掌を開いてみた。じっ…と見直すけれど、車のカギにはやはり、そんなものはついていない。いつもの、小さいキーホルダーが、ぶらん、とぶら下がっているだけだ。 はてな、首を傾げて耳を澄ます。と、また、ちりいん。どうやら音は部屋の外から聞こえてきているようだった。確かめよう、わたしはそう思ってカギをポケットになおし、扉のほうへと向き直った。
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