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それが、少しだけ分かったような気がした。ケイタが見ている景色がどんな景色か、すこしだけ覗けたような気がした。
ヒロトは、怖いんだ。
「……どう? 何か、分かった?」
視界の全てを小さな光で埋め尽くして、ケイタはそう聞いてみた。
「……いや、全然分かんないや」
ヒロトは壊れた望遠鏡を、右目から離さない。
ケイタは胸が苦しくなって、両膝に顔をうずめた。
「……俺は、まだ分かんなくて良いと思う。このまま生きていけば、そのうち見えてくると思う」
自分の声が震えている事は、とっくに気づいていた。
「俺たちも、あれみたいに生きていけると思う」 ヒロトが大きく鼻をすすった。そして、この世界の何よりも小さく「ありがとな」と言ってくれた気がした。
ケイタは、顔をあげた。さっきよりも、星空がぼやけて見える。
真っ暗な世界で、小さな光が、ケイタ達を照らしてくれている。どんなに世界が暗くても、星は明るい。
だから、大丈夫だよ。
ケイタは胸の中で、ヒロトの肩を強く叩いた。
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