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一 「宇宙と宿題」
「あのさ、宇宙ってめちゃくちゃロマンじゃない?」
蝉の声が鳴り響く教室で、威勢の良いヒロトの声が聞こえた。
「いや、よく考えてみなよ。宇宙ってさ、無限なんだぜ? そこにめっちゃ星があんの」
ヒロトの話は段々と勢いをつけてきている。彼のすぐ後ろの席に座っていたケイタもその勢いについに押され、シャーペンを数学の問題集の上に放り投げた。
「どう、壮大だろ?」
そう問いを投げかけると、ヒロトは堅い椅子の上で体勢をずらして振り向き、ケイタの顔を見つめた。大きく開いた目、微かに上へ沿った口、親に遊園地に連れて行ってもらった小学生みたいな顔が、それまで黙々と計算問題を解いていたケイタには少し鬱陶しく感じられた。
「それでな? その大量の星の中の『地球』って星に、俺らはいるんだよ。つまり俺らは宇宙の中にいるんだよ! な!」
なんの「な!」だよ。俺は一体なんて返せばいいんだ。ケイタはヒロトの熱い話を一歩引いて聞いていた。まるで、そこから放たれる熱気で火傷しないように離れているようだった。
「まあ、そう……だね」
ケイタは目の前の太陽のような眼球から視線を逸らして、小さく何度もうなずいた。
「だろ!」
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