三 「この真っ暗な世界で」

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 今朝、硬い工作用紙とたくさんの虫眼鏡を使って作った望遠鏡。説明書を見ながら作った望遠鏡。久しぶりにヒロトとケイタで向かい合って作作って、なんとなく、これで最後な気がする望遠鏡。 「それじゃあ、覗くぞ……」  ヒロトが寝ころんで、狭い穴から星達を覗いた。ケイタはただ、それを見つめている。 『あのさ、宇宙ってめちゃくちゃロマンじゃない?』  ヒロトは喋らない。 『宇宙ってさ、無限なんだぜ? そこにめっちゃ星があんの』  ヒロトの口は開かない。 『宿題とかは一端置いといて、今は宇宙の話だよ!』  時間がとてもゆっくり進んでいる。 『いや、それじゃ遅いんだ。今の内にやっときたいんだよね』  木が揺れる。蛙の声はすこし遠くなっている。『まあ、朝の運動は大事だからな。それに、時間も無いし……』  ヒロトは喋らない。 『まあ、そうだよな。いつの間にか変わったよな』  ヒロトは…… 『俺たちは、これから、何が何でも変わらないといけないんだなって事に、最近、気づいちゃったんだ』   「あっ」  流れ星だ。ケイタが向いている方の空。ヒロトからは見えないであろう、奥の空。  願い事はなんだろう。そう考えたとき、ケイタは、横で寝ているヒロトがなんで星を見たいと言ったのか。  何で俺を連れてきたのか。  何で夏の終わりに見に来たのか。  何で黙っているのか。     
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