一 「宇宙と宿題」

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 ヒロトが大きく息を吸い込む音がケイタの耳に届き、体が自然と強張る。 「こんなとこで溜まった宿題やってる場合じゃねえよなあ!」 「いやいやそれはさすがに違うだろ! 大体、宿題溜めてんのはお前だけだよ! どのくらい進んだの」  ヒロトの机に伸びるケイタの手はすぐにチョップを喰らい、同時に問題集も光の速さぐらいのスピードで閉じられた。しかし、ケイタはそれまで「三 文字式」のページが開かれていた事を、辛うじて確認できた。 「お前まだそこなのかよ!」 「見んなよ! 人のやつ勝手に!」  こいつ、全然やってない。百ページ以上もある問題集の中で、まだ四ページぐらいしか進んでない。その現実を突きつけるように、ケイタは前のめりの姿勢のまま、それまで視線を避けていたヒロトの目を見つめた。すると今度はヒロトの方から視線を逸らした。 「夏休みもあと二週間。……いけるか?」 「大丈夫! こんくらい余裕だから! 宿題とかは一端置いといて、今は宇宙の話だよ!」 「分かった分かった」  宿題を終わらせるために毎日こうやって教室に二人集まっているので、ケイタは宇宙よりも宿題のほうがはるかに優先されると思ったが、それを口には出さなかった。     
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