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ヒロトは「よぉーし」としたり顔を決めると、また大きく息を吸い込んだ。
「そんでな? 俺は宇宙のロマンってのに気づいちゃったわけだよ」
「どうせまたネットに影響されたんだろ? お前はいっつもそうだ。前はなんだっけ……時計?」
「ああ、『懐中』時計な。でも、今回はそんなんじゃないんだ。」
「本当か? 宇宙ってのもこれまた中学男子が好みそうなジャンルだぞ」
「ああ。だけど、絶対に違う。これは本気なんだ。」
ヒロトの視線がケイタを突き刺した。宇宙を閉じこめたような瞳を見るに、どうやらヒロトの言っている事は本当みたいだった。
ケイタは「そう……」とヒロトの思いに答えた。なんか、いつもと雰囲気が違う。彼の視線はケイタの目に注がれているが、それが放つ硬い空気に、ケイタの体はいつの間にかそれに包み込まれていた。
「それでな、本題なんだけど」
いつにも増して低い声だ。その声がよりいっそう、ケイタの心臓を鳴らしていく。
「俺は星を見たい! この目で見たい!」
ヒロトはさっきと同じ調子でそう言い放った。しかしその途端、今までまとわりついていた「いつもと違う空気」がどこか遠くへ行ってしまった。
「星を見る? お前そんなロマンチストだったっけ」
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