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何かに急いでいるような、焦っているような、妙な感じ。ケイタとヒロトはは小学校の、いや、幼稚園の頃からの付き合いだが、こんな様子のヒロトは長い記憶のどこを探っても出てこない。
でも、ケイタはヒロトに何も聞かなかった。彼が今、どんなことを考えていて、何をしたくて、どういう結果を望んでいるのか。星を見る事で、何を見つけようとしているのか。そういう事はなにも分からないが、とりあえず今は何も言わずに協力する。それが自分がヒロトに親友としてしてあげられる唯一の思いやりだ、ケイタはそう思った。
「んじゃあ、早速作ろう」
そう言うとヒロトはガサガサとビニール袋を鳴らして、中から二枚の紙を取り出し、一枚をケイタに渡した。
「親子で簡単! 手作り望遠鏡の作り方!」。紙の一番上には大きなポップ体でそう書かれていた。ネットのページをそのまま印刷したようだ
「それにしても、わざわざ望遠鏡作るなんてずいぶんと本格的じゃん。材料も揃えて」
「まあな。だって肉眼じゃつまらないだろ? 今夜には見に行くんだからな」
ヒロトが逆さにしたビニール袋から、望遠鏡の材料が勢いよく落ちる。物の扱いが雑なところは、昔から変わらない。ケイタはそんな彼の姿を見て、自分たちが小学生だったときの事を思い出した。
ーーケイタ! 今日は何作る?
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