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ケイタが方眼の入った工作用紙の封を切りながら言うと、ヒロトは「そりゃやるわけ無いだろ」と鼻で笑った。
こうやって二人で材料を挟んで向き合っていると、あの頃見ていた景色と今見ている光景がケイタの中で勝手に重なった。何でも創造できて、自分たちの世界で暮らしていたあの頃。記憶は鮮明になっていく。
散らばる材料、放り投げられた袋、テープ、ハサミ、教室、教室の真ん中に、ヒロト。
ただ、材料は皆、きれいに梱包されている。説明書も、用意されている。ヒロトの笑顔にはどこか寂しさが隠れているように見える。自分たちは確かに成長している。ケイタはそう感じた。
張りつめた空気に、ザク、ザク、と工作用紙を切る音が生まれては消え、生まれては消えを繰り返している。朝から元気な太陽には、今の自分たちには元気すぎる。ケイタはそう感じた。
「変わったな。俺たち」
それまで何となく考えていた事だったが、それを声に出して初めて、ケイタは気づいてはいけない事に気づいてしまった気がした。それまで見ていた教室内の景色が、一瞬にして「変化」の象徴となってしまう。
「俺たちは、変わらないって思ってたけど。やっぱ変わるんだな。」
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