第1章

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 このまま誰にも気付かれず、そっと、氷が溶けるように僕の全身が溶けてしまえばと思った。その方がマシだ。こうやって、ずっと教室に一人でみんながしゃべってるなか、どこにも入れず、誰とも交流を持たずに、一人でいるのは辛かった。一人でいるのが辛いのじゃない、ここで一人でいるのが辛いのだ。溶けてしまいたい……僕は……あぁ、妙な感覚を受ける。指先が溶けてる気がする。なんだろ、これまた錯覚だろうか。気がつくと、誰の声も聞こえない。僕の体は指先から徐々に溶けてるようだ。いや、足の爪先からも、上履きが脱げて靴下も脱げてズボンが軽くなり、頭を支えていた腕が消えるとごつんと机にぶつかる、まぶたを開けない暗闇のなか、で感じた。いや、暗闇ではない。まぶたを閉じても昼間の教室には日が射しているから光がまぶた越しに届く。カーテン越しに光が到来するように眼球は光を感知していた。白いワイシャツも軽くなっていく。やがて、頭だけになり、それでも僕はまぶたを開かない。  おちつけた。  穏やかだった。まるで、このまま天国につれてってもらえるような。僕は音もなく、静寂な世界に迷い混んだのか。やがて、クチも消えて耳も消えて目も消えて、頭もまるごときえ……。  ………。  了
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