電話

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 洋子のところにも『通知不可能』がかかってきていたのが驚きだけど今回の件があるだけに少し不安になった。私のところはずっと無言だけど「ゲロ」とか言われたら腹立つし不気味だ。  なんの進展もなく明日香と駅へ向かう道すがら携帯から着信を知らせるメロディーが鳴った。カバンから取り出してみてみると『通知不可能』の文字がディスプレイに現れていた。  となりに明日香がいることもあり通話のボタンを押す。  「もしもし」  「・・・・・・・・・・・・・」  相変わらずの無言であるので切ろうとするとかすかではあるが声が聞こえてきた。  「・・・げろ」  「え、なに?」  「どうしたの?」電話の様子を見て明日香が話しかけてきた。  「ちょっとごめんね、なにか言ってるみたいだから聞かせて。」  訝しげな明日香を横目に電話に聞き耳を立てる。どうやら「ゲロ」だけを言ってるのではなさそうだ。  「・・・げろ ・・・げろ ・・・逃げろ」  「え、なに?」  「スグニニゲロ」  「はい??」  夕方になり薄暗くなってきた街並みに隠れ何かが近づいてきていることに私も明日香もまったく気がついていなかった。「それ」は音もなく姿もなく気配だけの存在なのだがいざ近づいてくると確実に何かいることを感じさせてくる。  「明日香、走って!」  きょとんとした顔の明日香の手を引っ張りとにかく明るい方へ向かって走った。  「ねえ、どうしたの?」  「あとで話すから今は走って」  近くのコンビニに着いて店内に入ったときあまりの勢いにバイトの店員さんに不審がられてしまった。
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