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彼女自身の親子ネズミがいつ消えたのかは記憶に定かでないが、別の二人を高校時代に見ている。
生理不順が原因なのか、ある日病院に担ぎ込まれた。幸いそこまで深刻な状態では無かったが、しばらく入院することになった。
四人部屋がたまたま彼女一人になった晩。
深夜、目を覚ますと下腹部から女が生えていた。
田舎では若い部類に入る見た目の中年女の腰から上が、彼女の腹と重なっていた。
悲鳴を上げるのも忘れ驚愕し、足を猛烈にバタつかせたが、足は動いているものの腰から下の感覚が酷く曖昧になっていた。
たまらず腕だけでずり上がり、少しでも女から離れようとしたが、腰の移動と一緒に女は付いて来た。
すぐに頭が壁に着いてしまう。
頭の上でも気配がした。
予感を振り切るように見上げると、頭のすぐ近くに小さな女が生えていた。
こけし程の大きさの、目の前にいる女とそっくりな容姿をした小さな女が壁から垂直に生えて彼女を見下ろしていた。
この話を聞いてから十五年以上たつ。
その間に彼女の母親は闘病の末に身罷り、同居していた祖父は、ある朝突然に物置小屋で首を吊った。
どちらも二月。
ネズミの絵を描いた下の娘は高校を卒業し、その絵のことは全く覚えていない。
あの時の絵は今も都内のある作家の事務所に残っているはずだ。
彼女の妹も二人の娘をもうけた。よく実家に子供を預けにくる。
ただし母子共々母屋には滅多に近寄らない。
仏間でいない誰かに名前を呼ばれたり、仏前の茶碗が真っ二つに割れたりするのが嫌だからだそうだ。
彼女や妹の娘達がいずれ子をなした時にやはり、あのネズミはまたくるのだろうか?
そして、彼女の父親は未だに母屋で寝起きしている。
前妻母子と一緒に。
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