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幸いにもその後は、何事もないまま朝が来た。
身体も異常なしとのことで、すぐに退院できた。
けれどあれから悶々と考えるのだ。
俺があの夜に聞いた『救いの電話』からの声。
やはりあの声は栄太だったのではないか。
彼は公衆電話からの着信に『死ね』と言った。
俺があの電話ボックスで聞いた声のことは、結局彼には言えずじまいだ。
それなのに、こんな一致があるだろうか。
あの通話は数時間後の未来の栄太に繋がっていたのではないか、という考えが頭から離れない。
栄太に言えば馬鹿馬鹿しいと笑うだろう。
だから余計に、嫌な想像が加速する。
あの受話器から栄太の声を聞いたのは俺だ。
けれど俺から栄太に電話を掛けたわけではない。
『自殺者が自殺を止めてほしいから、あそこから電話かける』のだとしたら。
栄太の『死ね』という言葉を聞いたのが、俺だけではなかったとしたら。
あの通話が本当に、未来の栄太に繋がっていたのだとしたら――
……青白く膨れ上がった姿が未来の彼だと思うのは、考えすぎだろうか。
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