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毎晩のすすり泣く声の正体は公園で一人泣くホームレスのおっさんだった。 悩まされるほどではないが気になっていた音の正体がくだらないものだとわかりほっとした。 アパートの窓から見える公園のベンチに座る小太りのおっさんをじっと眺める。彼は何に涙しているのだろう。 何日かしておっさんの泣き声もようやく聞こえなくなった。 夕方、バイトの帰りに公園を横切った際、いつものようにベンチに座るおっさんの姿が目に入ってきた。 「げ」と思わず声が出た。 おっさんはほとんど裸だったのだ。 腰のあたりに黒ずんだ痣のようなものがついている様子さえ確認できるほど布を身にまとっていない。 一刻も早く遠ざかろうと早足で通り過ぎようとして足を止めた。 おっさんが呟いた名前に憶えがあったからだ。 「私は……、私は……」 か細い声で遠くで鳴くカラスの鳴き声にかき消されそうな小ささだったが、僕の耳に届いたその名は忘れようとしても忘れられない元同級生の名前だった。
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