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そういえば、妙な事件を思い出した。 僕らが卒業してしばらくたった頃、彼女の家に裸の中年男性が彼女本人を名乗り現れたのだ。父親は激昂し、近くにあったガラスの林檎の置物を投げつけたという。たしか腰のあたりに当たったはずだ。 なぜかあのおっさんの腰の痣が気になった。 公園に行くとベンチには誰も座っていなかった。 すすり泣く声も聞こえず夜中の公園は不気味に静まり返っていた…… アパートの管理人に聞くとあのっさんは道行く女子高生を眺めて、いや、それは不気味なほどに凝視していたために通報されたのだそうだ。 警察がすぐに駆けつけておっさんは逃げるように公園を出て行ったらしい。 これで、なぜあのおっさんが彼女の名を口にしたのかわからなくなった。 休日、僕は林間学校で行ったあの山に向かった。 (何をやっているんだ) 休日の無駄遣いだ。課題で出されたレポートでもやるべきなのに。 あの時、警察や地元の消防団が大勢で探し回ったのだ。今更僕が行ってなんになるというのだ。 ハイキングコースを歩く。 時期外れなのか周りに人はなく、雑木林の中をひとりで歩く。 (彼女も同じように歩いたのだろうか) それも道に迷いながら。 いくつかの道案内の看板を目にしたが同窓会で聞いたような獣道は見つからなかった。このままだと普通に登山して終わってしまう。 それでもいいと思った時に看板の裏側に細い獣道が現れた。 直感だがこの道だと思った。 道は細く長く林の奥へと続いていた。唾を飲み込んで一歩踏み出した。 「うわ!」 大きな鳥が近くの木から飛び出した。 情けなく尻もちをついてしまう。 (今の鳥、変だな) くちばしが見えなかったのは一瞬だったからだろう。 いつでも帰れるように後ろを振り返りながら獣道を奥へと歩いていく。
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