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猿と目が合った。 野生のニホンザルだろう。猿は目が合うと襲い掛かるらしいがその猿は木につかまったまま動かない。 ゆっくりと僕は木から遠ざかり、さらに奥へと足を進めた。 木々が開けた空間に出た。中央に泉のような沼のような水たまりが見える。 なにか気配がして泉の奥を見た。 言葉が出なかった。 鹿がいた。 大きな角を持った牡鹿だ。 しかし様子がおかしい。 顔が無い。 いや、鹿の顔ではなく人の顔がそこには張り付いていた。 あのおっさんの顔だ。 思い出すとさっきの猿の顔も人間の、あのホームレスのおっさんの顔だった。 僕は足を絡めながら獣道を逃げ帰った。 彼女はここまで来ていたのだ、きっとあのおっさんは……
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