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白い少女と顔のよく似た少女だった。年は2つ程上である。ただし、相違点は多い。髪は黒く、肌は血で染まっているため見えない部分が多いが、顔の半分ほどはしっかりと褐色のかかった肌色が露出していた。
だがそんなことよりも、白い少女とこの少女で圧倒的に違う点がある。瞳である。この少女の瞳には、光がこもっていなかったのだ。
黒い髪。黒い瞳。肌は赤いが、あえて黒い少女と呼ぶことにしよう。
「忘れてるんだね。あの冷静で、かつ優しかった姉さんはどこに言ったんだろう」
「訳のわからない事を。貴様も、報酬目当てで私を殺しに来たのだろう?」
少女はため息をついた。
「まあ、いいよ。そっちがそのつもりなら、話がはやい」
黒い少女は、滲むようにゆっくりと微笑を浮かべる。
「貴様なら、他の奴よりは何倍も楽しめそうだ」
白い少女の表情が、微かに締まる。黒い少女から発せられる、強烈で、挑発的な殺気。その邪悪な気に対し、体が反応しているのだ。
「わからせてあげる」
白い少女は、棒立ちになった。目の前の敵に対して構えもせず、ただ隙を晒している。
黒い少女は、笑みをより深くした。この隙が、罠であることを察している。
「フフフ……、期待通りだ!!」
土煙が上がると、黒い少女の体は地面から離れていた。圧倒的な速度で、白い少女に接近する。そしてその勢いを殺さず、己の右拳を、白い少女の顔面めがけて打ち込んだ。
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