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白い少女は、自分がされたのと同じようにしようと、黒い少女に手を伸ばす。だが、黒い少女の笑みは、それでも消えなかった。
「それができねぇから、ひよっこなんだよ」
白い手は、黒い手に、手首を掴む形で容易に封じられた。相殺ではない。完全に優劣がついていた。その瞬間、白い少女の表情に宿ったのは、想定外の絶望であった。
黒い少女は、逃がさないように腕を掴んだまま、もう一方の手を白い少女の額に素早く近づけた。放ったのは、軽いデコピンだった。
ボゴォ
叩き落とされたように、白い少女は凄まじい勢いで落下した。水柱が高く上がり、潮辛い雨を降らせた。
黒い少女はゆっくりと降下していき、静かに海に着地した。辺りは、再び波の音だけが支配していた。周囲に動きはない。だが、それでも黒い少女は確信していた。白い少女は、まだ死んでいない。
刹那、再び水柱があがる。額に血を滲ませた白い少女が現れた。空中で浮遊したまま、黒い少女を見下ろしている。その呼吸は荒い。
「水に叩きつけられたダメージは皆無。たが、額のダメージはかなりのものだろ。その痛みが、私とお前の差だ」
挑発するように、自分の額を指で叩きながら、黒い少女は言った。すると、白い少女は挑発に乗る様子もなく、ただ海面に降り、黒い少女と目線を揃えた。
「姉さん」
「あ?」
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