来世を信じて

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 そう言えば世間では、死ぬ事によってこの地球と言う星にあるどの世界とも違う、異世界と言う場所へと転移させられる話が何やら流行っていたっけ……。  全く以てバカバカしい話なんだけど、もしもそんな世界があって死ぬ事で行けるって言うなら、俺は間違いなくその世界を選択するだろうな。  今、俺がいるこの世界、日本と言う国で暮らしていけないなら、俺にとって外国も含めてどこも異世界って事になる。  それなら俺と言う存在を全て一新して、誰も俺を知る事のない未知の世界で生きると言うのも悪くないかもしれない。  それに、その異世界での物語では、主人公が無敵の力を手に入れてやりたい放題ってのが主流のようだった。  本当にご都合主義でバカバカしいんだけど、そんな簡単にカースト上位にも似た力を得れるなら、そしてこんな俺でも主役になる事が出来るんだったら、是非ともそんな世界に言って人生をやり直したいもんだ。 「……ふっ……」  俺の口から、込み上げて来た笑いが自然に零れて風へと溶けていった。  そもそも、来世や異世界なんかがあるなんて保障は何処にもないのに、死を目前にしてこんな事を考える自体おかしな話だ。  そんな馬鹿さ加減から漏れた笑いだった。  でもそのお蔭で、俺の心で今までとは違う何かの踏ん切りがついた。  肩の力が抜けたのかもしれない。  出来ない、無理だと考えて否定した事だけど、この広いと思われる地球上に存在する世界には、俺の知らない何かがまだあるかもしれない。  そしてそこで、俺は本当に第二の人生を迎える事が出来るかもしれない。
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