来世を信じて

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 ここで俺は一度死んだことにしよう。  実際には飛び降りなかったけれど、俺の心はここから飛び降りて、一度無へと帰っていったんだ。  無いかもしれない、夢物語でしかない世界に思いを馳せるよりも今、俺のいるこの現実世界でもう一度やり直してみよう。  まだまだ知識や経験が少ない俺から見ても、この世界は歪でどうしようもないけれど、だからこそ俺が生きて行く道もあるかもしれない。  今はまだ見えないけれど、何も俺の進む道はこの国の学校に行って社会に出るだけじゃない筈なんだ。  まずは今の俺に適した何かを探す事としよう。  ―――ズリッ……。  そう考えた俺は、踵を返してフェンス側へと戻ろうとして、僅かに足を滑らせてしまった。  それだけならば、少しだけバランスを崩した程度の筈だった。  ―――ビュオウオォ―――ッ!  その時、校舎を下から駆け上って来る突風が俺の体を捕まえたんだっ! 「うっ……うっそ―――っ!?」  その風は、屋上の際で態勢を崩していた俺の体を、いとも簡単に中空へと持ち上げたっ!  身体の向かった先が屋上の中央付近なら、俺は多少の打撲切り傷で済んだはずだろう。  でも残念ながら俺の体はその逆方向、校舎から大きく飛び出していったんだっ!  俺の体は日が傾きだして校舎や校庭、その他の世界をややオレンジ色に染めだした空間へと放り出されてしまったんだ!
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