エアー・ダイビング

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 ―――ああ……綺麗だな……。  俺は今の状況を冷静に把握する前に、まずそんな事を考えてその光景に魅入っていた。  まるでスローモーションの様に流れて行く光景は俺の視界に次々と、でも少しずつ姿を変えて飛び込んできた。  俺はしばらくの間、その風景を眺めていた。  そして俺は、同時に強く認識する事となっていた。  ……ああ……俺は死ぬんだな……と……。  校舎の屋上から、自分の意志だろうが不意の事故だろうとダイブしたんだ。  到底助かる見込みなんてある筈がなかった。  高さ二十数メートルと言えば、人が一人死ぬには十分な高さだ。  真下は植え込みなんてないコンクリート敷きの通路……。  余程の事が起きない限り、助かるなんて奇跡が入り込む余地なんてない。  ―――……ん……? あれ……? ……眺めている……だって……!?  その時俺は、強い違和感に襲われたんだ。
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