海岸線

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 それは昼過ぎのことだった。  旅館を営んでいる野口さんの元に一本の電話が掛かってきた。  高校時代からの友人である川田からだった。川田は釣りが趣味であり、魚が釣れた時にお裾分けしてくれることが多いため、なにか良い魚が上がったのかと思った野口さんは喜んで電話に出たという。 「おい野口・・・・・・今お前がさ・・・・・・俺の車の後部座席に乗っているんだけど」川田の第一声がそれだった。 「・・・・・・どういう意味だ?」野口さんはぶっきらぼうに返事をするしかなかった。 「俺もよく分からないんだけど、さっきお前を車に乗せたんだよ。でもお前じゃないんだ」 「ごめん、全然意味が分からない」 「顔も名前も全部お前なんだけど、電話に出たということは、やっぱり後ろに乗ってるのはお前じゃないんだな・・・・・・」  こんなやりとりが数回続いた。
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