海岸線

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 ハザードランプを点けた川田の車が見えてくると、野口さんは息を呑んだ。  確かに後部座席には人影があった。  男の輪郭である。  嘘じゃなかったのだ。  野口さんは車を停めると、エンジンを点けたまま中から飛び出して走った。捕まえるつもりだった。  運転席にいる川田と挨拶をしないまま、後部座席のドアノブを握りしめた。窓から中を覗くと、自分にソックリな男が真っ直ぐに前を向いていた。  野口さんは勢いよくドアを開けた。  しかしそこには誰も乗っていなかった。 「どうなっているんだ? さっき人が見えたぞ」野口さんはルームミラー越しに話し掛けた。 「また消えちゃった・・・・・・マジで怖い」ミラーに映る川田の顔面は蒼白になっていたという。
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