人間・模様死

　町内に、ダニやしらみが多くなり、『痒(かゆ)い』と、言って身体を掻く人が増えました。
　だれもが《これはウチだけかな？》などと思い。暑い盛りなのでペットの猫や犬のせいではないかと疑ったそうですが、原因は違いました。
　ネズミがダニやシラミを町内の家々に撒き散らしていたんです。
　それが証拠に、どの家でも夜になると、頻繁(ひんぱん)に天井裏で鼠が騒ぎ、柱や梁(はり)を齧(かじ)る音、けたたましい足音が轟きます。なぜか猫がいても役にたたず。退治するどころか怯えて部屋の隅で震えている始末だったそうです。
　ネズミ駆除業者を雇うにしても、町会費を使えるのは公共のアーケードの屋根に限定され、各々の家となれば、まさか町会費を使うわけにもいかず、とりあえず回覧板で駆除する業者と費用を書いたコピーを配布したそうです。
　が、これが不評で、老人会から「寺の住職でも来てもらうか、神社でお祓いするのが先決だろう」と、抗議されたといいます。