「こっちにしときな!」 

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ある女性の、母の話です… 彼女が2歳の時、ヒドイ熱のため、緊急入院となりました。病院に許可をもらった母親は 娘の病室が個室という事もあり、彼女のベットの隣に、簡易ベットを用意してもらい、 そこで、寝ずの看病をする事にしました。 部屋は子供用病棟の一番端で、その隣は高齢者の病棟が続いていました。 まだ幼い年齢、突然の病で命を落とす事だってあります。母親は気が気ではありません。 当時、彼女の父は離婚し、母は1人で懸命に働き、彼女を育てていました。 そして、熱が下がらないまま夜になりました。当直の医師からは、今夜一晩様子を見ましょうとの 診断をもらいましたが、安心など出来ません。 (まだ幼い我が子を…神様…どうか、助けて下さい。) そう願い、娘の頭に乗せる氷嚢を何度も変え、少しでも苦しそうな様子を見せれば、 すぐに看護師を呼びました。 そうやって気が付けば、時刻は夜中の2時…病室内は静かに、 いや、病棟全体が静まり返っています。少し疲れを感じた母親は娘の寝顔を確認し、 仮眠をとるため、簡易ベットに横になろうと、視線を入口側に向けました。 「えっ?…」 思わず声が漏れました。入口に黒い衣服、いや、全身真っ黒な人の形をしたモノが 立っています。  
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