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「つまり、君の話だと、その男にとっては、目の前に漂う、自身がよく見る
気持ちの悪くなる原因?それをいつものように取っ払ったら、君がいて、ビックリしたという事だよね?」
「うん、そうだと思う。多分、小っちゃい頃から見えていたんじゃないかな?
ただ、それを幽霊とか、超常現象的なモノとは捉えていないんだよ。あの人にとっては
よく見かける、当たり前のムカつく黒いモヤ…その程度の認識だと思う。
世の中には、多分そういう人がいっぱい居て、時々見えるモヤを祓ってくれる?
勿論、全てじゃないよ。アタシが起こしそうだった事件とか、正直、ニュースでも
似たような話一杯あるし。防ぎ切れてないモノだって、たくさんあると思うけど…
でも、そのおかげで障りとか、祟りとかが、世の中全体に、影響を及ぼさない、噂話や
個人のレベルで済んでるじゃないのかなって思う…何ていうか、無意識の除霊者みたいな感じの人達のおかげでさ…」
「無意識ねぇ…」
思わず呟く私の前で、彼女は少し考えこむような仕草を見せます。首を傾げた私に、彼女は
最後に、こう言いました。
「無意識…じゃないのかも…」
「?」
「周りの人に引きずられる時、あの人、大丈夫、大丈夫って何回も言ってた…」
「・・・・・」
「その言葉…ずっと私の目を見て、言ってた気がするんだよね?勿論、全然酔っていなかったよ。凄く優しい顔でさ。繰り返し、言い含めるように言ってた。
“もう、大丈夫”ってさ!」…(終)
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