おかえりとさよなら

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夏の記憶。 大学生の夏休み、夜どおしバカみたいなことして遊んで、空が白み始めるころ家に帰った。 早い夜明けと、タバコの煙。 そして――。  ――― 僕は家に帰り着くなり、灯りをつけないままキッチンの床に座り込んだ。 壁に背を預けて、タバコに火をつける。 明るくなり始めた部屋の中、漂う煙をぼんやりと眺めていると、夏だなと思う。 夜が短い。 ああ、今年も夏がやってきたんだなぁ。 なんて考えていたら、奥の部屋のドアが突然開いた。 「っ!?」 大学生のころから借りているこの2Kの部屋で僕はひとり暮らしをしていて、他の誰かがいるはずはないんだけど。 「おかえり、ユウマ」 「リカ!?」 そこに立っているのは、眠そうな腫れぼったい目をした、別れたはずの元カノだった。
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