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「え、なんでリカがいるの?」
鍵は普段からよくかけ忘れるから、今日も開けっ放しだったかもしれないけど。
「ユウマを待ってたんだよ。でもなかなか帰ってこないし、うとうとしちゃって、そのまま寝てた……」
背中の真ん中くらいまである長い髪は確かに少しぼさぼさで、寝てたらしいことはわかるけど。
リカとつきあってたのは、まだ美大に通ってたころ。
卒業後、僕は企業に就職して、以来リカとは連絡をとっていなかったのに。
「うん。僕を待っててくれたのはわかったけど、なんで突然?」
「迷惑だった?」
「迷惑……じゃないけど」
どうせ、今の僕にはやりたいこともないし。
元カノが家にいるからって、怒らせたり心配させたりするような彼女もいないし。
「会いたかったの」
もともと、リカの行動は唐突で突拍子がなかった。
本人はなにかしら考えているらしいけど、それがどんな回路でその時とっている行動につながっているのか、まわりにはわかりにくい。
「そっか」
「うん。ね、少しのあいだだけ、一緒にいさせて?」
今回もきっと、リカはリカなりになにか考えているんだろうと思った。
だから。
「いいよ」
僕がうなずくと、リカは夜明けの空に顔を出した太陽みたいに眩しい笑顔を浮かべた。
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