2人が本棚に入れています
本棚に追加
学生だった当時は、昼夜逆転した生活を送っていたから、日が傾き始めるくらいからが主な行動時間だった。
食事も適当で、集中して描いていると、空腹には気づかなかったりする。
でも深夜あたりになると、構内に残っている誰かしらが、なにか食いに行こうと誘いに来たりして、作業を中断できる連中でつるんで外に繰り出したりもした。
食事だけのつもりだったのにアルコールが入って、そのままアトリエには戻らず解散になることも少なくなかった。
適当で、でも真剣で。
厳しくて、でも優しい。
そんな時間が、当たり前にあった。
「ねえ、なにか話してよ」
リカの唐突のお願いに、僕は戸惑う。
「なにか、って?」
「なんでもいいよ。ユウマの声が聴きたいの。子守唄みたいでちょうどいいから」
子守唄みたい、という言葉に僕は苦笑した。
そういえば、リカはよく、僕の話を聞いている途中で寝ていたっけ。
記憶の中のリカは、口をわずかに開けて、あどけない顔ですやすやと気持ちよさそうに眠っていた。
最初のコメントを投稿しよう!