おかえりとさよなら

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「僕の声、そんなに眠気を誘う?」 「ちゃんと聞こえるんだけど、静かで落ち着くの。やかましい声も、忙しない声も、苦手」 僕は話すペースがゆっくりだから、そのせいもあるのかもしれない。 「僕はリカの話が聞きたいけどな」 僕の話なんて、きっとつまらない。 「話すのは疲れるし、好きじゃない。知ってるでしょ? 日本語難しいんだもの」 日本生まれ日本育ちのリカは、別に他の言語が得意なわけでもなかったはずだけど。 まあ、日本語が--っていうか、言葉を上手く使うのは難しい、っていう点には、僕も同意する。 「話、かぁ……」 「 話すことがないなら、歌でもいいよ」 「子守唄?」 本格的に寝るつもりなのかもしれない。 「なんでも」 仕方がないなぁ。 なにを歌おうか、と悩みながら、最近は歌を歌おうなんて考えることもなかったことに気づく。 ふっと思い浮かんだのは、昔、日本語の歌詞を当てたカバーが映画の挿入歌になっていた曲。 リカがよく英語で歌っていた。 発音はともかく。 僕だって、リカのことは言えないけど。 歌詞、覚えてるかな……。 僕は恐るおそる、その歌を口ずさみはじめた。
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