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「どれも死ぬじゃないか」
タイサは小さく笑った。
それを見たボーマは、いやいやと最後の選択肢を何度も指さす。
「ここっ! ここです。生き残るパターンがっ!」
「………どうせ、死ぬと思います」
バイオレットがぼそりと呟く。
「相変わらず厳しいな、バイオレット」
あまりの直球に、ふざけていたタイサも口が開いたままになる。
「ぐぬぬぬぬ」
後輩にあしらわれ、ボーマが打ち震えている。
「こうなったら、隊長を殺して俺が主役になります! 次回からは『底辺に堕ちた太った騎士』で行きます!」
「訳の分からんことをっ!」
ボーマがタイサに向かって飛び乗ってくる。彼の体重で乗られれば、いくらタイサと言えど致命傷に繋がりかねない。
「隊長ぉぉぉぉぅ!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!」
暗転。
タイサは目を開けると、視線の先には馬車の幌が見えた。
だが体が動かない。タイサは体に何か重たい物が圧し掛かっているかのように呼吸がし辛く、苦しかった。
「………こいつか」
タイサが首を上げて下を向くと、そこにはボーマがいびきをかきながらタイサの上で大の字になっていた。
「………隊長、どうかしましたか?」
交代で馬車を務めていたエコーが振り向いて荷馬車の中に声をかけてくる。
「いや………何でもない」
いっその事、荷物を減らしてやろうかと思ったが、タイサはこれは夢ではないと首を左右に振って誘惑から抜け出した。
まだ夜は長い。タイサはボーマから離れるように体をずらし、再び目を瞑った。
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