第一章

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 大陸一の国家ウィンフォス王国の王都『ウィンフォス』。国の名前でもあり、街の名前でもあるこの国は、建国からおよそ800年が経っている。数百年前は国家存亡の危機にも陥ったと言われているが、それでも困難を乗り切り、大小の戦争を生き残り、今や大陸で最も大きく裕福な国として繁栄した。  王都周辺は広大な平原に、西部は豊富な森林に囲まれ、東部南部は肥沃な農耕地区が広がっており、人が文明を築き、人が集まるには最適な環境であった。地域によっての差はあるが、基本的には1年中温暖な気候に恵まれている。今の季節は主要な農作物の収穫が終わる頃、そして次の季節で待つ加工品生産の準備に向けての間にあたり、国中の商人や加工業者達が良い原料を手に入れようと各街をせわしなく移動している。  数十分後、タイサ達はようやく西の大正門へと辿り着いた。初めてこの街を訪れた旅人や商人達は、まず巨人の門のような大きさに目を奪われ、釣られるようにみな真上を見上げていく。何度も出入りに慣れてきたタイサ達ですら、門が近づくにつれて自然と首の角度が大きくなっていくほどである。 「今日もまた随分と並んでいますね」  エコーが眉の上に手を置いて影をつくり、西の大正門前から続いている行商人の馬車や旅人達の列を見て言葉を零した。この時期はただでさえ混み合う上、昼前には王都に入ろうと考えた者達の思惑が重なった結果である。  だが騎士団は専用の通用門から優先的に入ることができる。タイサは行商人たちの列からずれるように指をさし、彼らの行列を横目に馬を進めていった。
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