第一章

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「で、本当の所。隊長は何を考えていたんで?」  ボーマがエコーと同様にタイサに尋ねると、タイサはいつの間にか全員の会話に耳を傾けていたようで、まだ任務中だとボーマ達に釘を刺しつつ、先程まで考えていたことを話し始めた。 「先ほどの蛮族の組み合わせが、少し気になっていてな」 「オークとゴブリンが、ですか?」  エコーの問いに、タイサはそうだと何度か頷く。 「確かに珍しかったとは思いますが、過去にオークのような格上の蛮族にゴブリン達が付き従っていた例はあったと思います」と、ジャック。 「俺も、そう思わないでもないんだが」  それだけではない、とタイサが付け加える。 「ゴブリン達が荷物を漁っている時、オークが出てきていなかっただろう? 普通なら格上のオークがやってきて、一番最初に良い荷物を選ぶはずだ。だが実際は格下のゴブリン達が我先にと荷物を漁っていたからな」  言われてみればと、エコー達の視線がそれぞれ異なる方向に向き、つい先ほどの記憶を振り返った。 「一応、本部にはそのことも報告しておきますか?」  エコーがタイサに提案したが、タイサは一瞬迷い、すぐに首を左右に振った。 「組み合わせについては無論報告するが、今の考えは俺の推測の域を出ないものだ。おまけに証拠もない。ダメもとで口頭では言ってみるが、向こうが受け止めてくれるかは難しい所だな」 ―――『色なし』の騎士団の報告を真に聞くはずがない。  ジャック達の脳裏に、共通した未来が予測される。  王国騎士団にはそれぞれ名前がついており、上位騎士団の5部隊には色の名前が含まれている。しかしながら下位の5部隊にはそれがなく『剣』や『牙』など短い名前が与えられている。タイサが率いる騎士団『盾』は下位騎士団の中で最も底辺の序列にあたる。  故にタイサ達の騎士団は『色なし』の下位層の騎士達からも『色なしの底辺』と呼ばれ、時には見下されることがあった。そんな騎士団の報告を本部がどこまで真に受けるか、タイサ達は考えるまででもなかった。 「皆さん、王都が見えてきましたよ!」  まだ底辺の洗礼をさほど受けていないルーキーは、タイサ達の雰囲気を読んでか、それともその逆か、今まで空気の歪みによってうっすらと影だけ見せていた王都が、気が付けば白い外壁がはっきりと見て取れるようになっていた。
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