第一章

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「珍しく、あの騎士団に討伐任務があったそうじゃないか」  西の大正門の端、騎士団専用の通用門の前で街に戻る手続きを行っているタイサの耳に、詰所で待機している騎士達の会話が入ってくる。 「本当かよ。いつも王都の中でうろうろしているか、王都周辺で馬を走らせているだけの連中がか?」「何でも、街道に出たゴブリン退治らしい」 「それは大変だ。あの騎士団にはさぞかし荷が重たかっただろう」  タイサが到着のサインを受付で書きながら僅かに手を止め、目線だけを詰所の中に向けると、詰所で話をしている騎士達がこちらを見ながら、鼻で笑うかのような笑みを作っているのが見えた。  今日の大正門の担当は騎士団『牙』、タイサの騎士団と同じく『色なし』の下位騎士団だが、下位の中での序列は最も高い。  いちいち他人の言葉に付き合っていてはきりがない。まだ直接言われないだけマシだと、タイサは彼らの会話を無視しつつ手続きを終える。そしてそのまま馬にまたがると、やや離れていたところで待機していたジャック達に声をかけ、大正門を堂々と抜けた。  大正門を抜けた先には石畳で作られた巨大な空間が広がっている。民間の馬や馬車は係の誘導に従ってそのまま専用の馬停めに向かって曲がり、徒歩で来た者は、残りわずかとなっているであろう宿の確保を目指して東西を貫く大通りへと足早に進んでいく。外ではだいぶ列をなしていたが、王都の中に入るといつもよりかは混み合って入るものの、ほどよく交通整理はされていた。 「いやぁ、ようやく着きましたね。正直、疲れましたよ」  ボーマがきつそうな鎧ごと肩を回して体の中で音をさせる。初陣だったルーキーもここにきて落ち着いたのか、一気に疲労の顔を見せていた。 「よし、ではここでいったん解散することにしよう。そのまま昼食に向かいたい者は、馬を門にいる騎士に預けていくといい。各自1時間程度休んだら騎士団本部の詰所に戻り、荷物の整理と武具の点検だ」  タイサは特に使った武具をその日の内に点検させることを特に厳しく指導していた。そのお陰か、タイサの騎士団の装備は、他の騎士団と比べて物持ちが良く、装備の破損率も低い。  タイサが言葉を続ける。 「俺は一足先に戻って本部に報告を済ませてくる。夜にはジャックの送別会とルーキーの初陣祝いを兼ねた飲み会がある。それまでには仕事を終わらせるぞ」  解散、とタイサは手を2度叩いた。
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