第三章

14/16
131人が本棚に入れています
本棚に追加
/151ページ
 2人はエコー達が待機している詰所の前まで来ると、タイサが古びた木製の扉に手をかけた。 「とりあえず仲間を紹介しよう」  扉を開けるとエコー達が一斉に入り口を向き、ゆっくりと立ち上がった。タイサが部屋に入ると、その後ろからバイオレットが続いて入り、エコー達と顔を合わせる。 「遅くなったが、新人を紹介する。バイオレット、自己紹介を」 「はい。本日より騎士団『盾』に配属されましたバイオレット・ウィック三等騎士です。よろしくお願いします」  バイオレットは小さく頭を下げる。タイサと初めて挨拶した時と同様に、型にはまった言葉を彼女は使った。  彼女の名前で動揺する前にタイサは小さく咳き込んだ。 「そのうち気づくだろうから先に言っておくと、彼女は貴族出身だ。だが、俺達の騎士団にそんなことは関係ない。みんなで仲良くしてやってくれ」  エコー達が小さく頷く。早速ボーマの目がいかがわしい目になっているが、タイサはボーマと彼女との視線を切るように体を壁にし、バイオレットに団員を1人ずつ紹介する。 「副長のエコーだ。彼女は今日からこの騎士団の副長に任命された。同じ女性同士、何かあれば相談するといいだろう」 「よろしくお願いします。副長」 「こちらこそよろしく。副長と呼ばれるのはまだこそばゆいが、女同士一緒に頑張っていこう」  バイオレットとエコーが握手を交わす。  続いてタイサは、一番背の高いルーキーの前に案内する。 「ルーキーだ。バイオレットと同じく三等騎士の新入りだ。数日程度の先輩にあたるが、同期だと思って仲良くして欲しい」  バイオレットが彼の名前を聞いて、表情に出してはいないがタイサの方を向きやや戸惑っている。 「ああ、うちでは新人は名前に関わらずルーキーと呼んでいる………そう心配した顔で見るな。バイオレットも同じ名前で呼ぶとややこしいから、先に名前がついた方がそのままルーキーと呼ぶことにした」 「………ルーキーです。よろしくバイオレット」 「よ、よろしくお願いします」  さすがのバイオレットもいきなりルーキーとは言えなかった。
/151ページ

最初のコメントを投稿しよう!