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「隊長! 街が見えてきましたよ!」
最後に森を抜けたルーキーが丘の上から見えた街を指し示した。距離からして同じ速度で走れば30分ほどだろうか、木造の家屋が多く見られるが、街の大通りらしき場所の周辺には石造りの壁や赤レンガの家もいくつか見てとれる。
「………隊長、何か匂いませんか?」
ボーマがしきりに鼻を空に向けて左右へと動かし、匂いの方向を探っていた。
「言われてみると………の程度だが、確かに焦げ臭いな」
タイサも偶然正面から吹いてきた風の中に、僅かに燻ぶった匂いが混ざっているのを感じ取る。だが森にも目的地の街にもそれらしき煙は立っていない。
それでも風向きから判断すれば匂いの元は街の方角になる。
「隊長、どうしますか?」エコーが判断を求めてきた。
単にゴミを燃やしているだけか、それとも火事か、野盗の類か。
いずれにせよ確認をする必要はありそうだとタイサは判断し、全員に槍や剣を包んでいる袋を開けさせる。また、背中に背負っている盾を腕に掛けるようにも指示し、即時に戦闘可能な態勢を命じた。
「全員、兜を付けろ。陣形はこのままエコーとバイオレットを中心に三段構え、戦闘になった場合の後衛はボーマとルーキー、先鋒は俺が務める。バイオレットはそのまま中段のエコーから絶対に離れるな」
「「「「了解!」」」」
緊張が一気に高まる。遠足気分が終わり、首から頭に向けて血液が集まっていくような感覚がタイサ達に襲い掛かる。
「行くぞ、全騎前進!」
馬の腹を蹴り、5人は前のめりに馬と共に風を切った。
一気に丘を駆け下り、平地を走ること十数分。街の東門がタイサ達の目に入るが、入口は簡単な柵で封鎖されており、しかも衛兵らしき姿は1人も見当たらない。
やはりおかしいと、タイサは何かの異常を察知し、盾のついた左腕を大きく外に向けて振って叫んだ。
「このまま左回りで街を迂回する!」
手綱を操り、柵や石垣が続く街の側面に沿って左に進路を変える。
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