第四章

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 側面を走ると、何やら小さな体をもつ個体がまばらに飛び跳ねているのが見えた。 「隊長、ゴブリンです! 数は10以上!」  タイサ達の中で最も目が良いエコーが細目のまま叫ぶ。同時に街の西側から煙が上がり、焦げ臭い匂いが一気に高まった。  タイサは虫を噛んだように顔をしかめ、背中のランスに手をかける。 「全員武器を構えろ! このまま左回りで突撃をかける!」  風の音が強い中、タイサの動きに合わせて全員がランスに手をかけた。そしてタイサの手の合図で大きく左に曲がり、さらに右へと曲がって街の西壁に沿って平行に走り始める。 「エコーを中心に横陣形、俺が右翼を務める! バイオレットは最後尾だ!」 「隊長、私も列に加わります!」  命令に従ってエコーを中心にランスを構えた騎馬が横列を作り始める。バイオレットもその列に加わろうとランスの先を空に向け、一番左端に馬を無理矢理移動させようと動き始めた。  そこにタイサの罵声が飛ぶ。 「馬鹿野郎! 命令に従え!」「………っ!」  風を貫いて届いた言葉が発する気迫に、バイオレットは一瞬で気圧されて言葉を失った。普段温厚なタイサが言葉を選ばずに怒鳴ってきた。思わずルーキーも自分のことかと思い、背筋を伸ばしている。  タイサの声にバイオレットはそれ以上動けず、仕方なく武器を剣に持ち替えるとエコーの背後に馬をつけ直した。  タイサ達が横隊を作って西門に向けて平行に走ると、ゴブリン達が西門に作られたバリケードに向かって火のついた木片を投げていたり、粗末な刃物で障害物切り崩そうとしているのが見えてきた。その数は見えるだけでも30匹を超えている。
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