第四章

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 さすがに馬の駆ける音でゴブリン達も騎馬の接近に気付き、身振り手振りで何かを叫び、仲間に敵が来たことを知らせていた。  タイサは右手のランスと左手の盾を器用に入れ替えると、全員に突撃を命じる。 「行くぞ! 絶対に速度を緩めるな!」  タイサ達は盾を前面に構え、ランスを持っている者達はゴブリンの身長に合わせてやや地面に対し下向きに先端を向けたまま速度を上げて突撃を仕掛けた。  一方のゴブリン達も何かをしようとこちらに体を向けてくるが、正面から迫る馬の速さに準備が追い付かずに次々と馬の蹄の下敷きなるか、何度も蹴られながら引かれていく。騎馬に背を向けて逃げ出すゴブリン達もいるが、馬の速さに勝てるわけもなく、結局は腹か背中かを踏まれていった。  タイサは西門のバリケードに群がるゴブリン達を腕に固定させた盾で次々と頭を狙うように弾き飛ばし、赤い染みを盾に上塗りさせていく。  馬でゴブリン達を蹂躙していく中、バリケード越しに戦っていた街の人々の不安な顔がいくつもタイサの目に入っていった。  タイサ達の一度の通過で、バリケードの前はゴブリンだった物の何かが散らばり、草や地面の色が変わっている。タイサはなるべく馬の速度を落とさないように大きく左に旋回することを指示しながらバリケードの方を見つめ、残っている十数匹のゴブリンの位置を確認した上でもう一度突撃の構えをとり直した。  そしてもう一度バリケード側にあたる左翼にタイサが馬をつけなおすと、後ろを振り向き、風の音に負けない大きさでバイオレットに声をあげた。 「バイオレット、こぼれた敵がいたら止めを指せ!」 「………了解!」  最後尾にいたために未だ1匹もゴブリンを仕留めていないバイオレットは、顔を少し青くさせながらも握っている剣を軽く手首を使って上下に振り、何度も深呼吸をして呼吸を整える。  そして2度目の突撃。タイサ達が通り過ぎると、バリケードの前に広がっていた大量の肉片と血が泥のように飛び跳ね、さらに新しく増えた残骸も合わせて地面に盛大に撒き散らかした。  2度の突撃にも関わらず、運良く生き残った数匹のゴブリン達は自分達がどうしてよいのか分からず、何かを叫びながら右往左往するだけで、完全に混乱状態に陥っている。
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