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「………副長、バイオレットを頼む。少し頭を冷やさせてやってくれ」「分かりました。申し訳ありません、隊長」
タイサの意を汲み取ってか、本来ならば自分達が諫める所だったとエコーが反省の言葉を述べたが、タイサは気にするなとすぐに返した。
タイサはそのままエコーにバイオレットを任せ、そのままボーマ達の元へと馬を動かす。
「ルーキー、怪我はないか?」
「あ、はい。大丈夫です」
タイサの言葉に反射的に答えたルーキーは、自分の姿を下から上へと急いで確認し、自分に何も怪我がなかったことに安堵する。
「なら良い。よく頑張ったなルーキー」「ありがとうございます」
「隊長、俺には何もないんですかい?」
嫉妬するかのようにボーマが割って入る。
「もしあったら、お前が今日からルーキーだ」「聞かなくても分かるという信頼関係ですね。ええ分かってますとも。もちろん怪我なんてありませんよ」慌ててボーマが真面目な顔で言葉を返し、最後に乾いた笑いを見せた。
ボーマとルーキーの様子を確認できたタイサは、2人に見えるよう街の方に指を向けた。
「よし、ボーマとルーキーは街の負傷者の確認と手当だ。必要なら持ってきた医薬品を使っても構わない。俺はその間に街の代表者から事情を確認する」
「了解です隊長」「分かりました」
通り過ぎ様にボーマがタイサの肩を軽く数度叩く。彼はそれだけで何も言わなかったが、バイオレットのことだろうとその意味はタイサにも伝わる。
タイサは気持ちを落ち着かせながら、もろ手を挙げて喜んでいる住民達に向かって馬をゆっくりと走らせた。
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