第五章

4/17
134人が本棚に入れています
本棚に追加
/151ページ
「正直な所、行方不明になった騎士団がここにきて戻ってくる可能性はないと考えて良いだろう。つまり我々5人で数百人の住民を守らなければならない」  タイサの説明にボーマが静かに手を上げた。 「隊長は援軍が来るまでの時間はどれくらいだと考えていますか?」 「明日の朝には第一次の避難民と共に、援軍要請の書簡を隣町で駐屯している騎士団に届ける手はずになっている。駐屯している騎士団が準備を整えてこの街に到着するまでに約1日。さらに別の街からの援軍が到達するのは………早くて2日後となると予測している」 「つまり最低でも丸1日は我々だけで守り続け、運良く2日目に援軍が来てもゴブリン達を完全に殲滅するのに何だかんだで4、5日程度はかかるかもしれないということですかい」  新入りの2人にも分かりやすく解説の入ったボーマの予想に、タイサは小さく頷いた。  隣町の援軍だけが到着しても恐らく十分な数には至らず、結局防衛に徹することは間違いない。追撃や反撃ができるのはさらに別の街からの援軍が到着し、数に十分余裕ができてからになる。そう考えるとボーマの4、5日程度という予想は現実的な数字だった。  タイサは他に質問がないかを確認し、次の説明にうつる。 「当面の防衛策だが………ゴブリン達は西の森を拠点にしているらしく、今までずっと西門を攻撃してきたそうだ。よって我々も西門を中心に陣を作り、住民達には長い棒に包丁や短剣などの刃物を巻いた即席の長槍でバリケードの隙間や柵を越えて来たゴブリンを攻撃してもらう。我々は反対の東門から抜けて、今日と同じく横隊による突撃をかけて敵集団を蹴散らす。単調な作戦ではあるが、今の我々には有効的な攻撃方法がこれしかない」  そもそも5人しか騎士がおらず、うち2人は新人という厳しい編成。下手にゴブリンの群れの中で立ち止まれば、いかに装甲のある騎士とはいえ無傷とはいかない。万が一鎧の隙間から毒が塗られた武器を刺し込まれれば目も当てられない。動けなくなった騎士がゴブリンに囲まれ、身動きが取れず生きたまま鎧と共に少しずつ体を削られていく様は恐怖以外に言葉が見つからない。
/151ページ

最初のコメントを投稿しよう!