第四章

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第四章

 一体何が起きているのか、皆目見当がつかない。  タイサはエコー達と共に西の大正門を出発し、ゆっくりと馬を進めながら2時間ほど考えたが、未だこれといった答えを見い出せずにいた。  結局宰相府に行っても、タイサは宰相のクライルとは会うことができなかった。扉の前で立っていた騎士が言うには、遠征の準備や交渉やらでここ最近不定期に何度も出払っているらしい。  代わりにと部屋から出てきた金竜騎士団のイーチャウ団長は、タイサの顔を見るやつまらなそうな顔で『命令書があるのだから、それに従うように』とだけ答えて話が終わっている。 「しかし隊長、珍しいですね、いきなり外の巡回警備とは。普通新人が入った日は街の中での巡回警備なのに」 「………そうだな」  隣で馬を進ませているエコーの疑問に、考え事をしていたタイサがやや遅れて返事をする。  通常は、新人に通常警備のルートや注意すべき場所などについて説明するために街中の巡回を行う。ルーキーが入団した時は数日間街中の巡回警備を行い、ゴブリン討伐の命が急遽下った時も丸1日かけて戦闘訓練をみっちりこなしてから出発したほどだった。  では命令が偽物かと言うとそうではない。バイオレットからもらった羊皮紙の命令書は、中央に王家の紋章が凹凸でうっすらと浮き出る細工が施されている正式なもので、騎士総長とクライル宰相のサインも直筆で入っていた。それ以上調べようとすると文官達の鑑定を必要とするが、当然ついてくるであろう無用の誤解や各方面からの苦情を考えると、タイサはそこまで実行することはできなかった。  ならばと、タイサは王都を出る短い間でギュードと連絡を取ろうと試みたが、別の仕事をしているのかギルドで会うことはできなかった。  奇妙だと思える程度の疑問は所々あるが、それらを立証するだけの情報をタイサは現状持ち得ていない。イーチャウ団長の言い方を除けば、命令が出ている以上、行動せざるを得ない。タイサはとりあえずそう結論付けた。
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