「…むおーん…」 

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いつ来るか?いつ来るか?と身構えていても疲れる。逆に楽しい事や、それを忘れていた時にあの声が聞こえると、気分は一気に台無し。 やがて、それを待っている自分に気づきました。 聞こえるのは1回ですから、それが終わってしまえば、今日1日は大丈夫。もう安心なんて思い始めちゃって…ホント、可笑しいですよね? そんな小さな声に、大の大人が怯えるんですよ?もう、ホント、勘弁! だんだん、イライラしてきました。 だから…声を出してる奴の顔を拝んでやろうと思ったんですよ。ほんと… それが大きな間違いでした…  (男のため息が混じり…少しの無言状態が続いた後、会話が再開される。) 始めは正直言って、楽しんでいました。何となく、声の主を見ちまえば、 問題が解決するなんて、勝手に思っていたんです。 だから、音が聞こえた瞬間に辺りを見回し、相手を探しす事を始めました。周りから見れば、 異様ですね。商談とか雑談で喋ってる奴の会話がいきなり止まって、サッと立ち上がる、 そして血走った目で、狂ったように、四方へ頭を動かすんですよ? 完全にイカレてます。友人や同僚にも、色々言われました。ですが、こっちは声の相手を 探すのに夢中ですから、一向に気になりません。 そうして、とうとう見つけました。帰宅途中の道で、声が聞こえ、咄嗟に振り向いたら、 いたんです。自分からかなり離れた…それこそ目をこらさないと、一瞬、気が付かない 距離…居酒屋とか飲食店が並ぶ、通りの角にある電柱の隙間からこっちを覗く黒い “何か”を… それは黒髪の女のようにも見えました。距離があるんでわかりませんが、目元はよく見えません。ただ、真っ黒い口ん中を限界まで開き、叫んだ感じで硬直している感じは、 マジ不気味でした。  
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