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背が伸びて少し見上げなければ目線が合わなくなっているし、体つきも大人の男の人になっているけれど、間違いなく、この人は裕樹だ。
五年前まで、私の弟だった男の子だ。
「ごめんね。待たせちゃったよね」
すっかり大人の男になってしまった元・弟にどぎまぎしながら、とりあえず私は笑ってみせる。家族だったはずなのに、こうして久々に会うと妙に気恥ずかしいのはどうしてだろう。
裕樹が身内の贔屓目を抜きにしても、ちょっとカッコイイ男の子になっているからだろうか。
ヨレっとしたTシャツに履き古した感じのジーンズという出で立ちだけれど、それも気にならないくらい爽やかだ。いかにも、好青年という感じ。
一緒に暮らしていた頃は、小柄で華奢な子だとばかり思っていたのに。会わない間に、随分と背が伸びて、体も鍛えたらしい。いい感じの細マッチョに仕上がっている。ゴツくはない適度な筋肉というものは、男の子に清潔感を与える。うん、これは女の子にモテるだろう。
「ううん。適当にお茶しながら待ってたから」
三時間ほど待っても、この受け答え。何でもないことのように微笑んで見せるなんて、合格だ。
「そんなことより、電話鳴らしてくれたらよかったのに。まぁ、キョロキョロしてる姉さんを見られたのは面白かったけど。姉さんは相変わらずだね」
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