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「そっか。電話で『どこいるの?』って聞けばよかったか。でも、慌てちゃって……」
言いかけて、私はやめた。小中学生の子を待たせているならいざ知らず、裕樹はもう二十一だ。しかも、ここ福岡よりうんと都会の、東京で大学生をしているのだ。博多駅くらいで迷子になるわけがない。
「……裕樹、大きくなったね」
思わず言ってしまったら、目の前の好青年は少し困った顔をしながらしばらく考えて、くしゃっと笑った。
それは、何年経っても変わらない、可愛い弟の笑顔だった。
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