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オートロックを外せない条件として掲げると、ないところと比べるとどうしても賃料は上がる。ただ、外観も立地も防犯も、と何もかも欲張りさえしなければそこそこ良いところに住める。私の場合は立地と防犯を優先したから、ここに来るまでに通り過ぎた新しいマンションと比べるとどうしてもくすんでしまう。
「マンションって、築十年過ぎたあたりから賃料が下がるから、立地の良いところに住みたかったら築年数に目をつむるといいよ」
「ふぅん」
裕樹の返事はどうでも良さそうだ。オートロックを解除すると、するりとエレベーターホールに入っていってしまった。
職業柄、どうしてもこういった話を膨らませたくなってしまうのだけれど、裕樹は別に賃貸マンションになんて興味はないみたい。残念。
「ねぇ、青春18切符で来たの?」
「あー……うん、まぁそんな感じの、それなりに青春を感じる手段で来たかなぁ」
東京から福岡に来るまでの道中の話を聞こうかと思ったのに、どうやらあまり楽しくはなかったみたいだ。
裕樹は肩にかけたレスポのボストンバッグを担ぎ直し、ニコっと笑うと私に早くエレベーターに乗るよう促した。
旅の感想を突破口にして事情を聞き出そうと思ったのに、どうやらそれは嫌だということらしい。
『姉さんに会いに来た。博多駅にいるよ』なんてメールを突然送りつけて来るのだから、何か訳ありにちがいない。それも、来てもいいかとも今から行くねとも言わずにやって来たのだ。簡単には話したくないことなのかもしれない。
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