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まだ混乱しているし、正直何だか恥ずかしい。でも、この腕を振りほどこうという気にはなれなくて、むしろ居心地の良さを感じていた。
私たちが姉弟でないというのなら、この離れがたい気持ちは何なのだろう。
その答えが出るより先に、別の問題が浮上してしまったのだけれど。
「……今の、どっちのお腹の音?」
「……わかんない」
「とりあえず、ご飯食べようか」
「うん」
抱き合ってお互いの鼓動だけしか聞こえない状態だったのに、間の抜けた腹の虫が二人の間に響き渡った。
今鳴らなくてもいいじゃないというくらい大きな音で、しかも振動までばっちり伝わってきた。そのおかげで、本当にどちらの音なのかわからなかったけれど。
「あー……しまらねぇなぁ」
「家族だから仕方がないよ。恋人だと、こうじゃなかったかもしれないけど」
体を離してお互い見つめあって、気恥ずかしさとおかしさで私たちは笑った。
私たちの関係を適切に示す言葉は、まだ自分の中に見つけられない。それでも、この子のことを大切に思っていることは間違いなかった。
なぜなら、裕樹の告白に私は嫌悪はないし、その逆で嬉しく思っているのだから。
ただ、“姉”としての私が、どうしたものかと混乱しているだけなのだ。
そればかりは仕方がない。
でも、時間が解決してくれると、私は自信を持って思っていた。
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