第七話「俺、デザートのこと考えてたわ」

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   これからのことも、色々話した。  まず、裕樹は東京に戻ったら演劇関係にすべてきちんと決着をつけると言っていた。これから先、就活を始めるとしたらどっちみち役者を目指す人たちとは温度差が出てくるのは必然だから、やめるなら今だろうということだ。  裕樹は、真面目に就活をするつもりらしい。しかも、福岡勤務狙いで!  裕樹は卒業してすぐ、私と一緒に暮らしたいと言っている。そのためには福岡で就職しなければならないということで、今からずいぶんと張り切っているのだ。  でも、とりあえずはいろんな企業を受けることを勧めておいた。ここ数年売り手市場傾向とは言え、楽々就職できるというわけではないのだから、最初から門を狭める必要はない。  それに、裕樹が勤務が決まった場所で私がまた就活をしてもいいし、少しくらい離れていても平気だし。何せ、私たちは別に遠距離恋愛をする恋人ではなく、家族なのだから。  ちょっと私たちの関係にはロマンティックさが足りないなとは思うけれど、離れていても安心というのは強みだと思う。  でも裕樹としては、私がまたホイホイ男を部屋にあげないかということが心配らしい。  だから、就活を口実にせっせと福岡に足を運び、そしてそのまま同棲したいという考えみたいだ。  これだけだと、まだ何だか度が過ぎたシスコンの弟のようにも思えてしまう。  けれど、裕樹はもうずっと長いこと、私のことを異性として好きだったのだという。  だから、告白されたあの日から、そういった意味でも私たちの関係は変わった。
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