第七話「俺、デザートのこと考えてたわ」

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 ***  年末ムード漂う駅で、私はひとり佇んでいる。  世の中はクリスマスが終わればあっという間に年の瀬といった雰囲気になり、師走の気忙しさそのままに年度末を迎えるのが社会人というものだ。  仕事納めが明後日だから、正直まだ体はきついし心は休まる余裕がない。  それでも、私は今この瞬間の人待ちの時間が愛おしくてたまらない。  邪魔にならないように改札口で待ち構えていると、ちょうど電車が到着したらしく、わらわらと人が出てくる。  時間的に、裕樹はこの中にいるはずなのだ。  今日は、裕樹が東京からやってくる。  年末年始を一緒に過ごすのだ。  大学生のときのことを思い出すと、クリスマスシーズンから正月の三が日が終わるまではバイトの書き入れ時だった。その儲かるチャンスをふいにしてでも、裕樹は私と過ごすことを選んでくれたのだ。  その代わり、クリスマス当日までみっちり働いたらしいけれど。  正月を一緒に過ごすため、私たちはお互い、クリスマスはリア充を横目にひたすら仕事を頑張ったのだ。 「芹香!」  キョロキョロと改札を抜けた人波に目をやっていると、ポンっと肩を叩かれた。そしてそのまま、脇へそれるよう促される。 「裕樹」 「もー……こんな改札の真ん前で待ってたらあぶないだろ? まぁ、すぐ顔見れて嬉しかったけど」 「顔見て嬉しいって、しょっちゅうスカイプしてるじゃん」 「じかに見るのと画面越しは違うんだよ」  自然な流れで地下鉄の乗り場へと私たちは歩き出していた。このまま、まっすぐ私の部屋へと帰るつもりなのだろう。
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