第七話「俺、デザートのこと考えてたわ」

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 コンビニに行ったら、何を買おうか。  そういえばこの時期、コンロで温めて食べる鍋物があったはずだ。別々のもの買って二人で分け合うのなんて、いいかもしれない。  お鍋って、家族っぽくて好きだ。ひとりの鍋は味気ないけれど、二人で食べると、きっと楽しい。 「そういえば、おこた買ったんだよ。小さいから、譲り合って入らなきゃだけど」 「いいねぇ。芹香は俺の膝に座ったらいいよ」 「またそういうこと言う!」 「え? 今のは別にそういう意味じゃ」 「え? ……もうやだー!」 「芹香はスケベだな」 「ちがうもん!」  夜の住宅街を、私たちははしゃぎながら歩く。その様子は子供のときと同じはずなのに、ちょっと変わってしまった。  昔は、お腹空いたねとか夕飯は何かなというような食い気一辺倒な会話だったのに、今では色気と食い気が入り乱れている。  何だかおかしいけれど、これがきっと私たちの形なのだ。  裕樹は私の家族で、大切な人だ。まだ弟として大切という気持ちもあるし、ひとりの男の人として好きだという気持ちもある。  その気持ちは、これからもっともっと育っていくのだろう。  そう思うと、恥ずかしさはあるけれど、やっぱり嬉しい。  その嬉しさを伝えるために、私は裕樹の手を握った。 「寒いから、早く帰ろうか」 「うん」  もしかしたら茶化されたりまたスケベなことを言われるかと思ったけれど、裕樹はただ私の手を握り返してくれただけだった。  温かくて、大きな手。  これから先、私は幾度となくこの手を握るのだろう。この手に頭を撫でられ、抱きしめられるのだろう。  そんなことを考えながら歩いた。
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