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「適当に座っといて」
「うん」
促す前に裕樹はきちんと洗面所で手洗いとうがいをしてくれた。このあたりに私の躾がまだ生きているのを感じるとホッとする。忙しい両親に代わってこの子に色々教えたのは私だ。あの頃一緒にいなかったら、きっとこの子は帰って来て手も洗わない子になっていただろう。
裕樹が腰を落ち着ける場所を見つけたのを横目で確認して、食材のチェックにとりかかる。玉ねぎと人参と、少し萎びているけどピーマンもある。冷凍庫に作り置きの鶏の竜田揚げも発見。これならささっと支度ができそうだ。
「裕樹、酢豚嫌いじゃないよね?」
「うん、好き。あ、俺はピーマン食べられるからね」
「……私もさすがにこの歳になれば食べられるよ。ちなみに、豚肉揚げてる時間もったいないから、鶏の竜田揚げで代用するからねー」
「何でもいいよー。あ、俺、米研ぐ」
「じゃあ、二合ね」
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