棲む

2/4
前へ
/4ページ
次へ
 俺が心配していると先輩は俺たちを部屋へと誘う。  部屋の中は食べた後やモノが混在していて、とても人を招くような部屋の状態ではなかった。 「適当に座ってくれ……」  数日前のテンションとはまるで違う先輩は、生気を吸い取られたかのように元気が無く、うな垂れるような感じでベッドへと腰掛ける。  その様子を心配そうにみる俺とは対照的に、Yはキョロキョロと辺りを見回した。 「……ここの部屋、家賃が三万だったんだ」 「さ、三万!?」  先輩の衝撃の一言に俺は目を丸くした。余りにもこの近辺の部屋より値段が破格だ。 「この裏に大きめの用水路があるんだ。そこで数十年前に溺死したばあさんがいて、そのばあさんがこのコーポに化けて出るらしい。だから、なかなか住み手が居なくてこんな値段なんだとよ」  俺はその話を聞いて段々と顔が青くなっていく。 「いわゆる、“いわくつき”って奴ですね」  そんな位雰囲気を壊すかのようにYが楽しそうに言う。 「そうだ。俺は最初面白がってこの物件に決めたんだが、それが間違いだった」  先輩はそう言って顔を覆う。     
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加